こんにちは、ライカレ(現ものかきキャンプ)卒業生、ライターのれみふくです。
※この記事は2022年9月26日時点の情報に基づき書かれたものです。10月7日に改定案が一部変更され「記帳・帳簿書類の保存があれば300万円以下でも概ね事業所得」と定められました。
国税庁:「所得税基本通達の制定について」の一部改正について(法令解釈通達)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/kaisei/221007/index.htm
会社勤めをしながらライティングの仕事を請け負う副業ライターにとって、いま最も気になる「300万円以下の副業は雑所得になる」問題。
「よくわからないけれど、これから自分は増税になるのではないか……」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
「増税」というデメリットなイメージが広がっている今回の改正案。たしかに今までと比べて多く税金を納めることになるライターもいますが、すべての副業ライターに影響があるわけではありません。
今回は、どのようなライターにどんな影響があるのか、この記事で明らかにしていきます。
2022年8月1日、国税庁が所得税の基本通達についての一部改正案を発表しました。
こちらをクリック⇒国税庁 「所得税基本通達の制定について」の一部改正について(法令解釈通達)
ざっくりまとめると、「副業の収入が300万円以下のとき、事業所得ではなく雑所得として取り扱う」という内容です。
300万円の収入は、平均すると月に25万円の収入です。これは、経費などを引いた後の所得ではなく、「売上」の金額であると覚えておいてください。
この記事を書いている時点(2022年9月26日)ではまだ案の状態ですが、この内容で決定するだろうという声が多く聞かれます。改正が行われた場合、2022年分の確定申告(提出時期は2023年2月16日〜)から適用されます。
副業ライターに関係のある部分について、改正案をもう少し詳しく見ていきましょう。
もともと、改正案が出される前から「事業から生じたと認められない原稿料は雑所得である」とされています。
国税庁のタックスアンサー(よくある税の質問)では、雑所得について次のように説明しています。
“雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得および一時所得のいずれにも当たらない所得をいい、例えば、公的年金等、非営業用貸金の利子、副業に係る所得(原稿料やシェアリングエコノミーに係る所得など)が該当します。”
「副業の原稿料は雑所得」とはっきり言っていますね。
ただ、原稿を書いて給与以外の収入を得る会社員の活動を「副業」とするのか、それとも「事業」とするのかの判断基準があいまいでした。
副業なら雑所得ですが、事業であるなら事業所得として確定申告を行います。
事業としての計画性はあるか、継続的な収入か、などで判断するということにはなっていますが、はっきりとした基準があるわけではありません。
趣味の延長なのか、事業として手がけているのか、同じ状況でも人によってとらえ方が変わります。
そこで、数字で判断できるようにしようとなったのが今回の改正案です。明確な金額が提示されました。具体的には、「業務に係る雑所得の例示」に次の文が追加されます。
“事業所得と業務に係る雑所得の判定は、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定するのであるが、その所得がその者の主たる所得でなく、かつ、その所得に係る収入金額が300万円を超えない場合には、特に反証のない限り、業務に係る雑所得と取り扱って差し支えない。”
引用:国税庁 所得税基本通達新旧対照表
ライター仕事の収入が自分のメインの収入ではなく、年間300万円を超えない場合は雑所得として取り扱いますよ、という内容です。
副業ライターの収入が事業所得なのか雑所得なのか、判断しやすくなります。
ここで、「事業所得と雑所得って何が違うの?そんなに重要なこと?」と疑問がわいてきますね。
事業所得には納める税金が少なくなるような優遇があります。青色申告の制度や、所得税の損益通算などです。
主なものを表にしました。
事業所得 | 雑所得 | |
青色申告:特別控除(10万円、55万円、65万円)の適用 |
〇 できる |
× できない |
青色申告:損失の3年間繰り越し |
〇 できる |
× できない |
給与所得との損益通算 |
〇 できる |
× できない |
決められた一定の基準でお金のやりとりの記録を残し、その記録に基づいた正しい申告をすることで受けられる有利な取り扱いが青色申告です。
青色申告を行えるのは、不動産所得、事業所得、山林所得のある人だけ。雑所得はその優遇を受けられません。
青色申告の特典はいくつかあり、その中でも副業ライターになじみのあるのが青色申告特別控除や損失の3年間繰り越しです。
特別控除とは、利益から一定の金額を引いたものに税金をかけましょう、という仕組み。つまり、納める税金が少なくなります。損失の3年間繰り越しは、今年出た赤字の分を次の年の利益から引いてもよいですよ、という仕組み。利用すると、納める税金を減らせます。
また、給与所得との損益通算ができるのも事業所得のメリットです。
事業で出た損失を、給与の所得と相殺できます。そうすることで、給与で源泉徴収された税金(あらかじめ引かれている税金)を取り戻せます。
実は、給与所得との損益通算を利用して、わざと事業所得で赤字を出すようにして節税する手法があります。
改正案が出された背景には、この手法を使いたくて強引に事業所得で確定申告しているケースがあることも影響しているのではないかという見方もあるようです。
この改正案で影響を受けるのは、いままで事業所得として青色申告を行っていたけれど、今回から雑所得の申告になるライターです。
事業所得と雑所得の違いで見てきたように優遇を受けられなくなり、今までと同じ収入でも納める税金の額が増えます。
そのぶん複式簿記などで記録を残す必要がなくなるので、事務作業はラクになるでしょう。もともと雑所得で確定申告をしていた副業ライターは、いままでと変わることは何もありません。
300万円以下の副業収入は雑所得になるという改正案はSNSでも大きな話題になり、さまざまな心配事が飛び交っています。 よくある心配事や疑問を解決しておきましょう。
安心してください。
雑所得でも収入から必要経費を引いたものが所得と計算されます。
インターネット通信費、書籍代、事務用品、カメラ、パソコン、交通費など、ライターの仕事に必要だった費用は経費にできます。
注意したいのが、雑所得では家事按分(かじあんぶん)の制限があること。
家事按分とは、仕事とプライベートの両方で使うものに関しては仕事に使う分のみを経費として計算することです。
たとえば、インターネットを使っている時間のうち7割は仕事で3割はプライベートだった場合、インターネット通信費の70%を経費として計算します。
雑所得の場合、家事按分が50%を超えないと経費として認められません。
開業届を出しているかどうかは、事業所得か雑所得かの判断材料にはなりません。
副業ライターの場合、ライターとしての収入がメインの収入(主たる所得)かどうかが問われます。
派遣社員やパートでも企業と雇用契約を結んで給与をもらっているなら、考え方は正社員の場合と同じです。
給与所得のほうがメインの収入でライター収入が300万円以下であれば、ライター収入は雑所得です。
ライターの活動のほうがメインだと説明できるのであれば、反証できます。
ライター活動が事業であると認められれば、事業所得で確定申告が可能です。
具体的にどのように反証するのか、改定が決定したら明らかになってくるでしょう。
副業ではなくライターを専門に活動している場合は、主たる所得と判断できます。事業所得で確定申告が行えます。
今回の改正案が決定すると、副業ライターの収入が事業所得なのか雑所得なのか明確に判断できるようになります。ライター活動での収入がメインの収入ではなく金額が300万円以下のときは雑所得、ですね。
税金が天引きされる会社の給与とは違い、副業の収入は確定申告に頭を悩ませることも多いでしょう。
これでひとつスッキリしました。
さあ、ここからは原稿の執筆に集中していきましょう!
文:れみふく(https://twitter.com/remifuku_)